創業時の資金調達において、多くの起業家が頼りにするのが創業融資です。しかし、創業融資に関しては、情報不足や誤った理解により、失敗や不必要なリスクを背負ってしまうケースが少なくありません。本記事では、創業融資を受ける際によくある誤解とその真実について解説し、正しい情報をもとに賢く融資を活用する方法を紹介します。

1. 「自己資金がなくても融資が受けられる」

誤解: 「創業融資は、自己資金がなくても受けられる」と思っている起業家が多くいます。特に「ビジネスのアイデアが素晴らしければ自己資金はなくてもいい」と考える人もいます。

真実: 実際には、自己資金が全くない状態での創業融資は難しいのが現実です。金融機関は、自己資金の有無を申請者の信頼性やコミットメントの指標と見なします。一般的に、自己資金は総資金の20%〜30%程度を目安とすることが推奨されています。自己資金が全くないと、事業のリスクを自分で負う意欲がないと判断され、融資の審査が通りにくくなります。

2. 「創業融資はどんな事業でも受けられる」

誤解: 「創業融資は、新しい事業なら基本的にどんなものでも融資を受けられる」という誤解がよくあります。

真実: 金融機関は融資を行う際、事業の持続可能性や市場性を厳しく審査します。たとえユニークなアイデアやビジネスプランを持っていても、それだけでは融資を受けるのは難しいです。市場分析や競合調査を行い、実現可能性の高い事業計画を立てることが大切です。特に、日本政策金融公庫などの機関では、ビジネスの現実性と成長可能性を重視します。

3. 「審査では利益計画だけを重視される」

誤解: 「創業融資の審査では、利益計画が重要視され、それ以外はそれほど見られない」と思われがちです。

真実: 確かに利益計画は審査において重要な要素の一つですが、それだけでなくキャッシュフローや返済計画、自己資金の状況も非常に重視されます。金融機関は、融資後の資金の使い道や、返済能力を総合的に判断します。売上が伸びる見込みがあっても、支出管理が適切でない場合、返済が困難になる可能性が高いため、全体のバランスを見られます。

4. 「一度審査に落ちたら二度とチャンスはない」

誤解: 「創業融資の審査に一度落ちてしまったら、もう融資を受けるチャンスはない」と考えてしまう人がいます。

真実: 創業融資の審査に落ちても、再チャレンジは可能です。審査に落ちた理由をしっかりと把握し、事業計画の見直しや改善を行えば、再申請で承認される可能性も高まります。金融機関の担当者にフィードバックを求め、どの部分が問題であったのかを確認しましょう。多くの場合、事業計画の具体性や財務データの信頼性を改善することが鍵となります。

5. 「とりあえず大きな額を借りた方がいい」

誤解: 「融資を受けるなら、できるだけ大きな額を借りておいた方が安心」と考える人が少なくありません。

真実: 必要以上の借入は、無駄な利息の支払いや返済負担の増加につながります。創業融資の目的は、事業を軌道に乗せるために必要な資金を確保することです。融資額が多すぎると、返済に追われて資金繰りが悪化し、事業運営に支障をきたす可能性があります。事業計画を基に、適正な融資額を見極めることが重要です。

6. 「すぐに融資が受けられる」

誤解: 「創業融資は、申請すればすぐに受けられる」と思ってしまうことがあります。

真実: 創業融資の審査には、一定の時間がかかります。特に、日本政策金融公庫の創業融資は、申請から審査までに約1か月程度の時間を見込む必要があります。また、書類の不備や事業計画の不十分さによっては、さらに時間がかかる可能性があります。事業の立ち上げスケジュールを考慮し、十分な余裕を持って申請を行うことが大切です。

7. 「返済が厳しくなったらリスケジュールはできない」

誤解: 「返済が厳しくなった場合、リスケジュール(返済計画の見直し)はできない」と思っている人も多いです。

真実: 金融機関によっては、返済のリスケジュール(リスケ)が可能な場合があります。たとえば、売上の変動や予期せぬ出費が発生した際、融資を受けた金融機関に相談すれば、返済期間の延長や月々の返済額の調整が認められることがあります。ただし、リスケを依頼する際には、誠実な対応と再建計画の提示が求められます。

まとめ

創業融資は、新たなビジネスを始めるための重要な資金調達手段ですが、誤解に基づいた行動や計画は、審査に落ちたり事業に支障をきたしたりする原因となります。正しい情報をもとに、しっかりと計画を立てて融資に挑むことが、成功への近道です。

創業融資を検討中の方は、ここで紹介したよくある誤解を回避し、確実な準備を行ってください。また、疑問点があれば、専門家の意見を取り入れて最適なプランを作成しましょう。