創業者が事業を立ち上げる際、資金調達は避けて通れない重要なステップです。銀行や金融機関からの融資は、多くの起業家にとって主要な資金調達手段の一つですが、融資を受けるためには担保や保証の提供が求められることが一般的です。本記事では、創業者が融資を受ける際に重要となる「担保」や「保証」について、その役割や重要性、考慮すべきポイントを詳しく解説します。

1. 融資の基本:なぜ担保や保証が必要なのか?

金融機関は、融資を行う際にリスクを最小限に抑えるために、担保や保証を求めることが多くあります。これは、融資を受けた企業が万が一返済できなくなった場合に、貸し手が損失を回避するための手段です。特に創業間もない企業や個人事業主は、過去の実績や信用履歴が十分でないため、返済リスクが高いと判断されがちです。そのため、担保や保証を提供することで、金融機関はリスクを軽減し、融資を行うハードルを下げることができます。

担保とは?

担保とは、融資を受ける際に提供される資産のことです。例えば、不動産、機械、車両、在庫などが担保として提供されることが一般的です。万が一、返済が滞った場合には、金融機関はその担保を売却して融資の返済に充てることができます。

保証とは?

保証とは、第三者が借り手の返済義務を引き受けることを意味します。個人保証や法人保証などがあり、借り手が返済できない場合、保証人がその責任を負うことになります。特に創業者自身が「代表者保証」を求められることが多く、これは個人の財産や資産で事業の融資を保証する形になります。

2. 創業者が担保や保証を用意する際のメリットとデメリット

担保や保証を提供することは、融資を受けやすくする一方で、創業者にとってもリスクが伴います。ここでは、担保や保証を提供することのメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット:

  • 融資が受けやすくなる
    担保や保証を提供することで、金融機関はリスクを軽減できるため、融資を受ける確率が高まります。特に創業初期は信用が乏しいため、担保や保証が融資を受けるための重要な要素となります。
  • 有利な条件での融資が可能
    担保を提供することで、無担保融資に比べて金利が低くなる可能性があります。また、返済期間や融資額の面でも、条件が有利になることが多いです。
  • 資金調達の選択肢が増える
    担保や保証がある場合、金融機関以外の融資機関からも資金調達が可能になることがあります。たとえば、政府系金融機関や公的融資制度では、担保や保証があることで融資の対象になりやすくなります。

デメリット:

  • 個人財産へのリスク
    特に「代表者保証」を行う場合、万が一事業が失敗した際に、創業者個人の財産や資産が差し押さえられるリスクがあります。これは、家族やプライベートにも大きな影響を与える可能性があるため、慎重に判断する必要があります。
  • 自由度の制限
    担保として提供した資産は、融資の返済が完了するまで自由に売却したり利用したりすることが制限される場合があります。これにより、事業運営における柔軟性が低下する可能性があります。
  • 返済プレッシャーの増加
    保証人を立てた場合、返済が滞った際には保証人に大きな負担がかかることになり、創業者としては心理的なプレッシャーも増します。保証人が家族や親族である場合、関係性にも影響を与える可能性があるため注意が必要です。

3. 担保や保証の代替手段

担保や保証を提供せずに融資を受ける方法もありますが、それには特定の条件が必要となります。以下に、担保や保証を提供せずに融資を受ける際の代表的な方法を紹介します。

政府系金融機関の活用

政府系金融機関や地方自治体が提供する創業支援の融資プログラムは、担保や保証を必要としない場合があります。例えば、日本政策金融公庫が提供する創業融資は、無担保・無保証での融資が可能な場合もありますが、事業計画書や創業者の経歴、事業の社会的意義などを厳しく審査されるため、準備が必要です。

クラウドファンディングやエンジェル投資家

クラウドファンディングやエンジェル投資家からの資金調達も、担保や保証を提供せずに資金を集める方法です。これらの手段は、主に事業のビジョンや将来性に共感した投資家や支援者から資金を得るため、融資とは異なり返済義務がない点が特徴です。しかし、調達のためのマーケティングや広報活動が必要であり、時間や労力がかかることも多いです。

4. 担保や保証を提供する際の注意点

創業者が担保や保証を提供する際には、以下の点に注意することが重要です。

  • リスクを把握する
    担保に提供する資産が将来的にどのようなリスクを抱える可能性があるか、十分に理解した上で決断する必要があります。また、保証人を立てる場合には、保証人に対する責任も明確にし、事前に十分な説明を行うことが大切です。
  • 無理のない返済計画を立てる
    融資を受けた後は、無理のない返済計画を立て、安定したキャッシュフローを確保することが重要です。返済が滞った場合には、担保や保証が行使されるリスクがあるため、事業の成長と返済のバランスを常に考える必要があります。
  • 複数の金融機関を比較する
    各金融機関によって、担保や保証に関する条件が異なるため、複数の選択肢を比較検討することが賢明です。金利や融資額、返済期間など、創業者の状況に最適な条件を見つけるために、複数の金融機関に相談することをお勧めします。

まとめ

創業者が融資を受ける際に、担保や保証は非常に重要な役割を果たします。それらを提供することで、金融機関からの融資が受けやすくなる一方で、個人や事業へのリスクも伴います。創業時の資金調達は、事業の成功に向けた大きな一歩です。慎重にリスクを見極め、適切な資金調達手段を選びましょう。