創業時に締結する契約書は、事業の安定と成長にとって重要な役割を果たします。契約書には、取引先やパートナーとスムーズにビジネスを進めるための条件が記載されていますが、不備があるとトラブルやリスクが生じる可能性があります。創業者が契約書を締結する際に、特に注意すべきポイントを押さえることで、安心して事業を展開できるようにしましょう。

契約書の重要性

契約書は、当事者同士の権利や義務、責任範囲を明確にするための文書です。契約書が適切に作成されていれば、万が一のトラブルが発生した場合でも、法的に守られるための根拠となります。契約内容に不備があると、予期せぬ支出や損害が発生する可能性があり、創業時の経営に大きな負担をかけるリスクがあります。

創業者がチェックすべき契約書のポイント

契約書の内容をしっかり確認し、必要な項目が網羅されているか、また、誤解やリスクを避けるための配慮がなされているかを確認することが重要です。以下は、契約書の締結時に必ずチェックすべき主要なポイントです。

1. 契約当事者の正確な記載

契約当事者(自社および相手方)の正式な名称や住所、代表者名が正確に記載されているかを確認します。法人の場合、会社の正式名称や法人番号が記載されていることが重要です。正確な記載がないと、契約の効力が無効になる可能性もあります。

  • チェックポイント
  • 契約当事者の名称、住所、代表者の氏名
  • 法人の場合は法人番号や登記簿の情報

2. 契約の目的・内容

契約の目的や取引内容が明確に記載されていることも重要です。契約書には、どのような商品やサービスを提供するのか、具体的な業務の範囲や品質基準など、取引の目的が詳細に記載されているか確認しましょう。曖昧な表現があると、後から解釈の違いでトラブルになるリスクが高まります。

  • チェックポイント
  • 提供する商品やサービスの詳細、範囲
  • 品質基準や納品形式、業務内容の詳細

3. 契約期間と更新・解除条件

契約期間が明確に設定されているかを確認します。契約期間が定まっていない場合、契約の終了タイミングに誤解が生じやすくなります。また、契約更新の条件や、解除したい場合の条件についてもチェックが必要です。特に自動更新の場合、更新通知の期限がいつまでかも確認しておきましょう。

  • チェックポイント
  • 契約期間(開始日、終了日)
  • 契約更新の条件、更新通知の期限
  • 契約解除の条件と手続き

4. 料金と支払条件

料金や報酬、支払方法についても正確に確認が必要です。具体的な料金の金額や支払期日、支払方法(振込、現金など)が明記されているか、また、支払いが遅れた場合の対応(遅延利息など)が記載されているかをチェックします。

  • チェックポイント
  • 料金や報酬の金額
  • 支払期日、支払方法
  • 支払い遅延時の対応(遅延利息の有無)

5. 契約不履行時の対応

契約不履行(契約内容が守られなかった場合)の対応についても確認します。不履行が発生した場合の損害賠償の範囲や、補償の内容、責任の範囲が明確に記載されているかが重要です。損害賠償請求の方法や、どのような場合に賠償義務が発生するのかも明記されているか確認しましょう。

  • チェックポイント
  • 契約不履行時の賠償範囲と金額
  • 損害賠償請求の手続き方法
  • 契約解除権の有無

6. 秘密保持条項

取引を進めるにあたり、自社や相手方の機密情報を取り扱う場合、秘密保持条項があるかを確認します。秘密保持条項では、どのような情報が守秘義務の対象になるか、情報漏えいが発生した場合の対応が明記されています。秘密保持の対象範囲や期間についても確認しましょう。

  • チェックポイント
  • 守秘義務の対象情報と範囲
  • 秘密保持の期間
  • 情報漏洩が発生した場合の対応

7. 知的財産権の扱い

契約内容に基づいて、著作権や特許権、商標権といった知的財産権が発生する場合、権利の帰属や利用範囲について明確に記載されているかを確認します。特に、自社が開発した製品やサービスに関する知的財産権が相手方に帰属することがないように注意が必要です。

  • チェックポイント
  • 知的財産権の帰属先
  • 知的財産権の使用範囲や期間
  • 権利の譲渡や利用許諾の条件

8. 力量免責条項(不可抗力条項)

自然災害や戦争、法令の改正など、当事者がコントロールできない外的な要因によって契約が履行できなくなる場合に備え、不可抗力条項が記載されているかを確認します。不可抗力条項があれば、天災や非常事態に対する責任を免除することが可能です。

  • チェックポイント
  • 不可抗力に該当する条件(例:天災、戦争、法改正など)
  • 不可抗力が発生した場合の責任範囲と対応方法

9. 紛争解決方法

契約上の紛争が発生した場合の解決方法や管轄裁判所についても、契約書に記載されているか確認します。万が一トラブルが起きた場合に備え、事前に紛争解決方法を取り決めておくことで、迅速かつスムーズに問題解決が図れます。

  • チェックポイント
  • 紛争解決の手段(協議、仲裁、調停など)
  • 管轄裁判所や準拠法の明記

10. 契約書の署名・押印

契約書は、当事者双方が署名または押印することで効力が発生します。契約書が両者に署名・押印されているかを確認し、各ページに捺印が必要な場合はそれも忘れずに行います。電子契約の場合も、正式な署名プロセスを経ているかを確認します。

  • チェックポイント
  • 当事者双方の署名・押印の確認
  • 各ページの捺印が必要な場合はそれも実施
  • 電子契約の場合は、法的に有効な署名であることの確認

契約書を確認する際の注意点

契約書の内容を確認する際には、以下の点にも注意を払うことで、契約内容の理解が深まり、不備を防ぐことができます。

  1. 専門家に確認してもらう
    契約書は法律用語が多く含まれているため、弁護士や法務担当者などの専門家に確認してもらうと安心です。

特に重要な契約書の場合は、リスク回避のために専門家に依頼することをおすすめします。

  1. 曖昧な表現がないか確認
    契約書には、「適切なタイミング」「合理的な範囲」などの曖昧な表現が使われることがあります。曖昧な表現は解釈の違いを生みやすく、トラブルの原因となるため、可能な限り具体的な表現に置き換えましょう。
  2. 相手方との合意確認
    契約書の内容について、相手方と共通認識を持つことも重要です。誤解が生じないように、事前に相手方と内容について確認し、相互に納得できる内容に調整します。

まとめ:契約書をしっかり確認してリスクを回避する

創業時の契約書は、今後のビジネスを円滑に進めるための基盤となります。契約内容をしっかり確認し、不明点やリスクがないかをチェックすることで、トラブルを未然に防ぐことができます。今回紹介したチェックポイントを参考に、契約書を確認し、安心して事業を進められる体制を整えましょう。